Y-GSAの時の恩師である小嶋一浩先生が2016年10月13日に食道癌のため逝去されました.井上にとっては、Y-GSAで転機となったスタジオを指導してくださった先生で、大和田の修士論文発表でも、我々の建築のヒントとなるような大切な言葉を頂いたりと、我々にとって、とてもとても大きな存在でした.独立して、少しずつ形になっていく我々の建築が出来た際に、お呼びして、学生時代では応えきれなかった小嶋先生から与えられた数々の課題に対する我々なりの答えをお見せして、またあの大らかな笑顔で豪快な批評を頂きたかったなと、またハッとするようなお話やチャーミングな姿を追いかけたかったと、、、、しばらく落ち込んで、でも我々の中に少しずつ、小嶋先生の存在が内在化され、いつでも小嶋先生とは対話ができるという前向きな気持ちに変わってきました.
そんな中、Y-GSAの学生達が、小嶋先生の誕生日でもあり、49日でもある12月1日にMOOMを建ち上げて、翌日の夕方に小嶋先生が大好きだったワインを呑みながら小嶋先生を偲ぶ会を企画してくれました.
久しぶりに母校の横国に行くと学生時代は、フレームだけだった正門のアーケードがすっかり緑に覆われていて、時の流れを感じました.
小運動場に行くと、広い地面の上に軽やかに不思議な形と存在感を放ったMOOMが建ち上がっていました.昨晩の悪天候の中、ぐちゃぐちゃの土の上で学生達が泥を掘り起こしながら、MOOMを建ち上げたそうです.
MOOMは東京理科大学小嶋一浩研究室と佐藤淳構造設計事務所+太陽工業によるもので、膜構造の新たな可能性を求めて、能村膜構造技術振興財団の助成を受けてつくられたパビリオンです.テント膜は太陽工業のシェードアスールを使用していて、膜が引張材となり凹凸が出来ることで圧縮材であるアルミパイプ同士が触れることなくテンセグリティの構造となっているそうです.
今回の会には、教え子だけでなく北山さん、西沢さん、乾さん、藤原さんといったY-GSAの教授陣や小嶋先生の仕事上のパートナーであるシーラカンスアソシエイツの赤松さん、また奥様の城戸崎さんもいらっしゃってました.MOOMの中で乾杯した後は、パワープラントに移動し、たくさんの思い出を語り合いました.色んな立場の方からのたくさんのエピソードから浮かび上がる小嶋先生の姿は、とても愛らしくチャーミングで、今までもこれからも目標にしたい生き方です.最後に城戸崎さんが「小嶋が亡くなって、寂しいというよりは、いろんな方が色々な小嶋の話をしてくれるので、一人だった小嶋がたくさんの小嶋に増えた」という言葉がとても印象的で素敵だなと、私も色々な小嶋先生の姿を思い出しながら帰ってきました.
Soi 井上