本日は、カルチャースタディーズ研究所の三浦展さんにお誘い頂き、トークショーを拝聴しました.
新書『商業空間は何の夢を見たか 1960~2010年代の都市と建築』と『東京田園モダン』の出版を記念して、共著の藤村龍至さん、南後由和さんと三浦さんのトークショーで、司会は、建築史家の倉方俊輔さん、会場は坂田夏未さんが主催する夏未組のオフィスです.
トークは、まず『商業空間は、、、』の本の内容を軸に始まり、この本の中で、三浦さんは、パルコの本質である「60年代」、藤村さんはご自身が生まれ育った「埼玉」、南後さんは、ショッピングモール研究から「広場」へとそれぞれの興味が向かっていきながら、商業空間や街づくり等を話していきます.南後さんのショッピングモールの研究では、直線型だったモールが大阪万博頃を境に、曲線型、滞在型へと形式の変化を見つけ、日本的な広場ということに向かっていったそうです.
ヨーロッパ的な囲われた場所よりも日本人は道の延長にある場、たくさんの出口があり、流動の中で滞在できる場がある場所を日本的な広場になるのではないかとお話しされていました.その時に例に挙げられていたのが、渋谷のスクランブル交差点でした.
我々は大学院生時代、渋谷のスクランブル交差点の空間性に大変興味を持ち、そこから設計のコンセプトも構築していたので、すごく通じるものがあるなと思いました.
60年代と現代は、同じようなゲリラ的な時代になっているが、60年代は個人のペルソナや直感で多くの人々を動かしていたのに対し、
現在は、公と民が一緒になって、それぞれの地域の土着性と個性を通じて街づくりをしているという話の中で、仙田満さんの新書『人が集まる建築 環境×デザイン×こどもの研究』は、「人が集まる」という建築家に求められる能力を技術的に(空間として)どう実現するかということが書かれている素晴らしい本という紹介がありました.
この本は、読んだことがなかったのですが、大変興味が沸きました.
確かにそういった理論とは違う、基礎体力のようなものをきちんと研究、学習し、身に着けていくことは、これからもしっかりと向き合っていかなければいけない問題だなと感じました.
その中で、藤村さんがおっしゃった「現代の街づくりは、35歳の街づくり、子育て世代の街づくりだ」という言葉はとても印象的ではっとしました.
また、歴まちのような修景街づくりは、成功している反面、モノガタリにすがる虚構の街づくりだという視点も私には、なかった視点だったので、そういう見方もあるのだなと考えさせられました.
街づくりでも、ある施設や建築でも、そのクライアントが当事者意識をしっかり持って、どうするべきか考えていくこと、他人に計画を丸投げしないことが重要だと考える倉方さんの考え方は、我々が普段から考えている、施主、設計、施工の三者のあり方とも考えが近く、最近、相談を受けていたあるプロジェクトの計画で考えていたことにも通じることでした.
その考え方に対し、藤村さんは主体があって、外部が入ることが重要で、それによって学識を持った客観的な組み立てができるとお話しされていました.
藤村さんは、最近ご自身の生まれ育った埼玉エリアにお仕事として、積極的に関わっているようで、第四の山手の内側と外側には建築家の仕事領域があるが、第四の山手で仕事をしている建築家はほとんどいないということに気が付いたそうです.
確かに、第四の山手や郊外、建売等、建築家が自身の建築や思想とは線引きをしている範囲にアプローチしていくことは、藤村さんの捉えている建築的概念の大きさを感じ、強く共感しました.ご自身は、現在の建築界への振る舞いとはまったく違う方向へ40代で転身したいというお話も聞けて、私が今までイメージしていた藤村さんの印象とは、いい意味でGAPがあり、今後の活躍がとても楽しみです.
トークショーの後は、懇親会で、いっぱい美味しいものを食べた後、登壇者の方々にたくさん質問をしました.
同世代とは違う価値観を共有できてとても刺激的な夜でした.
倉方さんと世代の違いのお話しをしている際に、奥さんや子供等家族の話をするようになったのは、藤原さん以降の世代(1975年生まれ以降の建築家)だよね、と話されていて、言われてみれば確かに!と盛り上がりました.
Soi 井上