前回訪れた際は通常モードとは違うトークイベントモードの会場だったので、今回は通常営業?モードの「○○書店」へ寄ってきました.前回井上だけで伺ったので、今回は大和田も連れて訪れました.(よく我々はそれぞれがお会いした方にとても興味が出ると、必ず相方を引き連れて再び会いに行くのです.)前回はトークイベント後にお話ししたこともあって、トークイベントで出た話題に関するお話しを色々とお聞きしましたが、今回はこの展示自体が生まれたきっかけ等を聞かせて頂きました.今回の展示が始まるきっかけは、ondesignの西田司さんと、「書店をひらく」ということを模索し始めたこと、そこに明治大学の南後由和さんも加わり今回の企画を考え、場所を探している時にプリズミックギャラリーから夏の開いている期間中に何かやりませんかとお声がかかったそうです.設計事務所と書店を作るために今回作った屋台の装置は、色んな方々を巻き込み、アイデアを抽出して、南後さんから批評や編集を受けながら進んでいったそうです.建築畑の方のみならず、多様な価値観の元、製作していく過程はとても興味深いですね.
実際の製作にあたってはFabLabの方にも協力してもらいながら進めていったそうです.キャスターのついたフレームに360mm角のBOXを埋め込んで使用する屋台形式の什器です.
仲間内では、いつの間にかこのBOXが”坂山BOX”とか”坂山フレーム”と呼ばれるようになっていったのだとか、という微笑ましいエピソードも聞きました.坂山さん自身の身体スケールで設計されていることが、使い手としての坂山さんが作り手としての坂山さんにフィードバックされて進んでいるのがよく現れていてとても興味深い作品です.
BOXを製作するのにあたって、合板を切り出した後の残ったパネルをみると、どのようなパーツの組み合わせでできているかよく分かります.BOXは360mm角で製作しているので、一つでスツールのように、また二段重ねれば机やカウンターのように使える寸法体系になっています.またBOXの中も単純な空洞という訳ではなく、内部に凹凸を作ることで、サイズの違う本に少しだけ寄り添ったり、事務所側と書店側の収納として活躍したりするようです.またこの本のための高さの違いの寸法は、書店員さんとしての経験を活かして決定しているそうです.また奥行きを持たせることで違うサイズの本を同時に並べられるという展示の仕方も書店員さんとしての経験ならではの設計です.書店員としての経験やスケール感が建築家としての設計にフィードバックされています.
本の展示方法も今回は、設計で活躍する製図用のトレーシングペーパーをブックカバーとして使うということにチャレンジしているそうです.左の写真の本は、そのままの背表紙が見える状態で、右の写真の本は、トレーシングペーパーを巻いています.
トレーシングペーパーを巻くことで、様々なデザインで情報を発信していた本の背表紙に、ある統一感を持たせています.また半透明な紙なので、置いてあると本とトレーシングペーパーの間に隙間ができ、手に取らなければ、詳しく内容を見ることができないという、本をなるべく手にとってもらう仕掛けとしても考えられているそうです.またいくつかの本は、坂山さんのおすすめのコメントやお客さんのコメント等も書かれていて、一つの本がまた違うメディアとして生まれ変わっています.
こちらの屋台は、売約済みでした!会場においてあったOSBは、お客さんが手にとった本を読んでそのまま置いていくことができるテーブルとして宮晶子さんの研究室の方々と共同設計されたものを作るための材料だそうです.残念ながら会期中の製作は、間に合わないということでしたが、この会期が終わった後もこの活動を別の形で続けていくことを考えているそうで、またお披露目が楽しみですね.
坂山さんとは、これからの建築家のあり方に対する考え方がとても近く、少しだけ顔を出すつもりが、色々なお話をしてしまい、とても長居してしまいました.
展示は、日曜日まで開催しています.最終日は、大西麻貴さんと南後さん、坂山さんのトークイベントと西田さん、南後さん、坂山さんの今回のプロジェクトメンバーのトークイベントもあるそうです.まだ行かれていない方は、ぜひ足を運んでみてください.
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日時:2016年7月22日(金)-2016年9月11日(日)10:00-17:00
場所:プリズミックギャラリー
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Soi 井上