スタジオ・アルテックの室伏次郎さんの自邸『北嶺町の家』の見学会が開催されるとの事で行ってきました.北峰町の家は、1969年に設計、1971年に竣工、当時室伏さんは29-31歳だったそうです.今の我々の年代の時に設計されていんですね.新築当時は、当時の価格ですが、坪あたり13万円で建てられたそうです. す、すごい、、、
立面を走る片引のサッシと上部の小庇がとてもかっこいい!この建築は、これまで何度か住まう家族が代わり、その度に改修をしています.建築当時は室伏さんのご家族と親戚家族が上下に分かれて暮らしていました.室伏さんのお子さんが大きくなってきた時に親戚家族が引っ越したため、改修して家全体を室伏家が住みました.その後は3人のお子さんは旅立ち、現在は三男家族が帰ってきて、上に三男家族、下に室伏さん夫婦が住まわれているそうです.
長方形の南北にそれぞれ耳のように飛び出しているスラブが4層積み上がった箱という構成ですが、その出ている耳の部分が家族の住まい方に合わせ、室内化したり、アプローチの階段がつけたされたりしながら自由に姿形を変えてきたそうです.
とても単純な基本構成ですが、よーく見てみると、ディテールがこの生活に大きく貢献している様子が読み取れます.耳の部分へ出る開口部は単なる四角い穴ではなく、場所によっては面取りがされていたり、段差がついていたりします.この段差が小物を置くスペースだったり、文机になったりするそうですが、もうひとつ、単純な矩形じゃないことで、この先(設計者である室伏さんの手から離れた時に)この箇所にサッシが入ることを避けれるという意図もあるそうです.
玄関部は建築現場の足場が組んであり、植物に覆われています.玄関から細いアプローチが続きます.
奥の屋外階段も足場です.とても細くて手すりもなく、動く度に揺れるというスリリングな階段ですが、、。パンチングメタルと生い茂る木々と強い日差しによって、階段の踏面面にとても綺麗な影が落ちていました.
こちらは4階部分、第二回改修時に入れたV字の補強梁が空間にかなりのインパクトで存在しています.
4階のスラブの半分は可働床になっていて、壁に設置されている鉄骨に木を渡すことで、増床可能な仕組みにしています.一部は吹き抜けています.
こちらは3階部分の可動床の下部分です.現在は三男家族の住まいになっています.
最後は、屋上へ、スラブから10cm程度しか土を盛っていないそうですが、一面が緑になっていました.新築当時は、容積率の改訂直前だったため、周辺の建物より頭一つ高くなっています,そのため、屋上に登ると180度見渡すことができます.室伏さんの時代は、建築家は自邸でデビューすることが多くありましたが、近年の建築家は殆ど自邸を作りません.我々は、自分が住まう空間を自分で実験した上で設計をすることは、とても大切だと考えています.設計するものと自分が普段過ごす場所や生活がかけ離れていては説得力がありません.今回印象的だったのは、北峰町の家は無断熱で空調が4階しか入っていないのですが、最後屋上で室伏さんのお話を聞く間、集まった見学者はみんな汗だく、、、そんな中室伏さんだけが汗をまったくかいておらず、涼しそうなお顔をされていました.環境次第で人間は鍛えられるんだなーと感じた瞬間でした.
その後は、カルチャースタディーズ研究所の三浦展さんの趣味部屋である不通案にてグレン・グールドの鑑賞会へ、グールドの音楽はもちろん素敵ですが、我々は彼の人柄や思想、生き方自体に傾倒しているので映像もとても楽しめました.グールドの他にもフルトヴェングラー、パコデルシアの映像も見せて頂きました.フラメンコギタリストのパコデルシアを初めて聴きましたがとても良いですね!!また新しい音楽の世界が広がりました.
三浦さんが実家にある古いLPプレーヤーを我々の事務所にプレゼントしてくださるそうです.
嬉しい!とても濃厚な一日でした.
Soi 井上