栃木県益子市に向かう途中、茨城県笠間市にある
建築家 伊東豊雄さん設計の『笠間の家』を訪れた.
陶芸家の故・里中英人さんのアトリエ兼住居として1981年に建築され、
現在は笠間市が管理し、カフェ、ギャラリー、工房として利用されている.
緩やかな坂道を上っていくと、かなり高低差のある斜面地にライトグレーの質素な片流れの妻面が見えてくる.
周囲の起伏に富んだ地形を芝生のさわやかな緑が覆っている.
土地の表情に応答するようなおおらかなカーブと細かく雁行した壁面からなるこの建築は、
この場所に対して、とても自然な建ち姿をしているように感じた.
アルミ製の軽い玄関ドアを開け、室内に入ると、
規則正しく割り付けられたフレキシブルボード外壁の印象から一転、
白く抽象的な家型断面の空間が広がる.
建物に入るというより、空間の流れに合流する感覚に近い.
所々に存在する、水平に金属目地の入った黒い壁が、
空間にスケールを与え、流れを制御する弁のように思える.
それは心地よい抽象空間の経験で、流れに身を任せるように建築を散策できる.
デンマークを旅行していた時に、同じような経験をした.
ザハ・ハディド設計のオードロップゴー美術館 増築部(2005).
うねるコンクリートの躯体に平行四辺形のトップライトが空間に流れつくる.
空間に従えば、経路も美しい景色も自然と理解できる気の利いた空間.
ザハの建築からは造形というより、空間を経験するということの面白さや心地良さ、
建築とランドスケープの応答の豊かさに感銘を受けた.
ギャラリーを一通り見終えた後、カフェでコーヒーを頂く.
椅子に座り、止まっていても、光の回り込みが空間の流れを感じさせ飽きることが無い.
久しぶりに上質な空間体験を味わった興奮を、一緒に見学していた両親に熱弁する.
さっさと車に乗り込み、日が暮れる前に行こうと急かす彼らに、
この空間の素晴らしさがどれ程伝わったのかは全く不明だが、
急ぎ益子”土祭”へと向かう.
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TEL 0296-73-5521
開館時間 9:30~17:00
休館日 月曜日(祝祭日の場合は翌平日)・年末年始
※施設・整備保守点検等の理由により、臨時休館となる場合があります
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オードロップゴー美術館 Ordrupgaard
Vilvordevej 110 2920 Charlottenlund
TEL +45 39 64 1183
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Soi 大和田